昔怪人と呼ばれていた男は七面鳥に惚れる
アラガイs


釘は六寸に引っ掻いた胸の痕跡
左は股の付け根から膝がしらにかけて
合わせて一尺近い縫い込みの跡が盛る
想像するリアル怪人(例えばフランケンシュタインとかゾンビだとか)
切り裂き息を吹き返す
ラストナイト
/それはわたしの中にも

憧れのロックスターを夢見て
顔に数えきれない整形手術を繰り返したという
、その昔怪人と呼ばれた顔の男がいた。
男には自負もあったが、いくら手術でスターを真似ても似つきもしない
素地の違いは明白だった。
なにを捨てたのか、真実は遠い乳母車の軋みに
実は髪の毛が薄かったとか肺を患っていたとか
本当は去勢手術を受けていたのだ、とか
、周りの人間たちは男の昔をすっかり忘れてしまった。

そうして縁もなく噂を聞きつけた派手な女が男のまえに現れた。
宮殿に据えられた大理石の悩ましいオブジェ
魔性を誘う真っ赤な唇
まるで樹の皮を剥いだような艶のあるなめらかな白い肌から
機械的に整えられた端正な顔立ち
フェロモンの
、括れた腰が唸る
うりうりと割れる、驚きの人々、
巨大な胸と尻のふたつに地面が妖しく揺れた。
あまりにも有名な女優とそっくりに仕上げられている
通称マリリンと呼ばれた
それは誰もがふりかえるような女性だった。

男はすっかり魅了され
その半年後に二人は結ばれた。
しかしお互いどちらにも秘密の舘があり掟がある
それはクリスマスの前後、一定の期間は必ず別居するというサイレントな
、なんとも不思議な約束ごとだったのだ。夜にメリークリスマス……
その後マリリンは60を過ぎて亡くなった。だが、
不可解なことに彼女の屍を見た者は彼氏しかいない。
※一説によれば
痩せ朽ちた茶葉色の躰とは対照的に、皺のない顔は生き生きと白く輝いていた
また場末の酒場に屯するという女の噂話を真に受ければ、
どうやら棺桶の中身は頸から上のほうが無くなっていたらしい、とか、
やれやれ、想像もつかない、怖い作り話しである。
どうせなら
入れ墨は六寸ちょっとの十字架に仕立て
周りは小さな北斗星でカモフラージュ(皮膚が突っ張るとか)
痛みで咳もできない、
、リアルできない話しだが
ぱっくりと開いた胸郭の中で
心臓が激しく鼓動を打つのだ。









自由詩 昔怪人と呼ばれていた男は七面鳥に惚れる Copyright アラガイs 2019-12-06 04:36:07
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