求めるもの
帆場蔵人

頭部のない地蔵が地に突き刺さり私は石くれを拾い集めて供えていく。顔は覚えてくれているのか、と問われても元より知らない。けれども手を合わせることだけは遠い昔に習ったし、あの鳥のように歌を供物にしてあの花のように枯れるのも倣うのだ。やがて屍を滋養に花が咲きまた誰かそれをつむ。石くれは宮殿の礎になりいつか人が住む。

宮殿の周囲には花が幾万も咲き誇り、鳥たちが囀っている。それを見もせずに人びとは好き勝手に無駄口を叩き、手を叩き合う。絶えることのない空胞と花火の炸裂音は誰の心も打つ事もなく空騒ぎはかさを増していく。誰も頭部のない地蔵が自分たちの立つ地下に突き刺さっているなど考えもしない。手を合わせることもなく、祈りはどこに向かうのか。

私はふと虚しくなり、奥へ奥へと歩んでいく。そうして最奥で見つけた枯れた井戸に身を投げる。砕け散る私の頭部。砕け散れ宮殿よ。枯れ井戸の底深く私は突き立つ。大地に捧げられるのはこの身ひとつしかなく。手は合わされている。ただ合わされている。


自由詩 求めるもの Copyright 帆場蔵人 2019-12-03 23:02:58縦
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