鬱憤に接吻 【都々逸】
ただのみきや

高いギターでうんちく語り ボロンと鳴らし仕舞う人


素面じゃかぬ吐くほど飲まず 歌の含みも酒で濡れ


部屋を片付け窓を開ければ 迷子の風も寄って往く


捨ててあげよかトランプ遊び 嫌な手札てふだをチラリ見せ


捨てるも残すもトランプ遊び 選ぶは人でふだじゃない


手札あやつるつもりでいるが 自分も札だと忘れてる


風が歌えば白雪踊る 頼みもしないアンコール


身を持ち崩し水へと流れ 生まれ真綿の白さでも


こんな話に涙を浮かべ あなたの水脈みおを辿りたい


松の葉積もる小石の道に 重い雪足し跡つけて


意図を気にして手繰たぐり過ぎれば ほつれも穴も見えて来る


冬の嵐じゃ仕事にならぬ ならぬ鐘など誰が突く


冬の嵐じゃ仕事にならず ならず者でも金は要る


悪事の小舟不安が過る 慣れりゃ大渦ばか嗤い


すべて回りのせいにしたって 痛み悲しみ自分持ち


小さな影も入れ子は無限 病は気から木には種


ギター倒してうつろが響く 言葉まとえず鳴るこころ


書いて言葉はからになっても こころ爛れて吐き続け


誰に抱かれることもないまま 芯まで冷えた裸婦の像




                  《鬱憤に接吻:2019年11月23日》











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