裸のマリー
千月 話子

牧場は、今日も晴れるや。
山の向こうまで続く青空に
ポツリ、ポツリ 綿雲
良く乾いた干草が ホロホロと
風に浮かびそうな具合で
何となく 美味しそうだと思うのは
雑食動物の脳内変換 ゆえ
「食いしん坊、バンザイ。」と
口の端で笑い 青臭い匂いを嗅ぎながら
味わう 至極素敵なお食事をした
朝 10時ごろ





生暖かな 牛舎では
光り輝く黒毛和牛「与太郎号」が
本生なビールを グビグビとやっていたりする
つまみは カリカリの穀物か?



別棟で ひしめく夏の乳牛が
 乳を搾られ 草を食み
 乳を搾られ 草を食う
甘く乳臭い充満 ああ、マザー。



名も無い牛の 濃いミルクを飲むよ
張った膜は いつまでも噛み切れないガム
「ごちそうさま」の代わりにあなたに贈るわ
白黒の 美しい「マリー」 そんな名前





春の食欲は 美食家を生むのね。
呼んでいるは 呼んでいる
売りは 高級すき焼きですって
繊細な 油の跳ねる音を響かせながら
指し示された証明書には「与太郎号」
こんな所で出会ったからには
誉めて 誉めて 誉めちぎろう か
脳もトロケる至福の キミよ
発泡酒なんかで悪いけど
腹一杯お飲みよ、 さあ!





春の食欲は 財布も腹を空かせてますって。
今日 食べ放題の 焼肉店へ
スニーカーで ラララララ。
取り皿に盛られた ホルスタイン
青空を見上げて飲んだミルク もう出ない
焼き上がった内臓から 何とはなく
甘い香りがしたの で 合掌。。
さよならマリー あなたじゃなくてもサヨウナラ 
始まりの 内臓は食べずに帰るわ 裸の・・・





牧場は 今日も ハレルヤ。
緑の草が 美味しいと
反芻しながら 歌ってる
 
全ての牛に 素敵な名前を。


自由詩 裸のマリー Copyright 千月 話子 2005-04-06 17:28:54
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