架空請求書
たもつ



壊れかけた百葉箱の中で眠っている僕の架空の妹
いろいろと短いのに産まれた順番だけで長女になってしまった
安心して眠れるように頭を撫でてあげるけれど
架空だから忘れられていくものがある
食卓には夕食が並んでいる、並べられている
並べているのは僕の実の兄
長男だから長い
その一方で短い所も散見される
父はだらしなく座り、身体のほつれた箇所を繕っている
その度に、はあ、はあ、と呼吸のような独り言が唇から洩れている
だからいつしか僕の口癖も、はあ、はあ、となった
明日はお出かけよ、母がキッチンから言う
皆んな嬉しそうに明日のお出かけを思う
お出かけの前の晩は、いつまでこうしていられるんだろう
と計算しながらベッドに入る
朝、目覚めると僕自身が架空だから
何か一部分がない時がある、もしくは何ひとつとしてない時がある
身に覚えのない金額が書かれた請求書が風に吹かれて飛んでいく
やがてどこかの海に落ちるのだろう



自由詩 架空請求書 Copyright たもつ 2019-11-23 11:22:44
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