空中遊泳
ミナト 螢

つま先で立つと地面が揺れて
あらゆる命が追い越してゆく

足音や虫の音が触れる場所で
上を向いたら広い空の端に
糸口があって傷を縫えるまで
花が咲いてると訊いてみたくなる

お願いだから棘(針)をくれないか

レースのカーテンの編み目のように
光を連れて痛みを散らせば

雲はたくさんの傷跡を隠し
雨は汚れた糸を洗うんだ

見えるかいこんな優しい世界に
音符が届くたびに思うのは

踵を下ろすなら今しかなくて
風の支えに甘えられるような
僕が愛した人の声だった


自由詩 空中遊泳 Copyright ミナト 螢 2019-11-19 06:45:19
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