自分史(業界誌記者時代3 ー やりがい、反響)
日比津 開

 記者としての仕事は、楽しくやりがいがあっ
た。駆け出しの若僧でも取材先では一人前と
して扱ってもらった。もちろん、それは僕の
実力ではなく通信媒体を持っているためで、
取材は業界内、ライバル会社の動向など情報
交換の場となっていた。

 先輩記者とは仕事が終わると、毎日のよう
に飲みにゆき、ジャーナリストとしての心構
えや業界、取材先のいろいろなことをお酒を
飲みながら教えてもらった。大学時代もクラ
ブ活動で飲み会はあったが、本格的にお酒を
飲むようになったのはこの頃からだった。

 記事が載ると、電話や取材に行ったときな
どに問い合わせ、質問が入るようになった。
前向きなスクープ的な記事には更に情報がな
いかとライバル会社の担当者から探りが入っ
たり、反対に記事が業績不信や事業分野から
の撤退、倒産などマイナス的な記事だと書か
れた会社からクレームが入ったりした。

 記者会見では発表、質疑応答が終わると参
加した記者にお土産的なプレゼントがあった
り、ホテルでのビッフェスタイルのパーティ
ーがよくあった。東京とその近県が取材範囲
だったが、たまに仙台や名古屋、大阪などへ
出張があった。

 あるメーカーの代理店会に呼ばれたときな
ど、パーティーのほかにプロ野球の野村監督
の講演会を滋賀県の雄琴温泉で聞いたことが
ある。また親しくなった大手メーカーの広報
課長とはよくランチをご馳走になり、ディナ
ーのときはフルコースのあとハイヤーで都内
から千葉の自宅まで送ってもらったりした。
それも、記者の役得のようなものだった。


散文(批評随筆小説等) 自分史(業界誌記者時代3 ー やりがい、反響) Copyright 日比津 開 2019-11-17 16:20:25
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