空白
ミナト 螢

長押しを続けるスペースキーが
溜め息の後で増えていくんだ

口を開けている白いノートに
イルミネーションが反射した夜
果物で手を汚すのが嫌で
透明な椅子に座らなかった

苦手なことが多くなるたびに
間隔を空けて歩いてきたから
時間は門限を既に破り
帰る理由を見失ったけれど

いくつ叩いたら答えてくれるの

消せない画面にしがみつきながら
点滅を数えるカーソルだけが
呼吸の始まりを整えていた

キーボードに打つ文字はなくても
埋もれたままの自分に気づいて

誰かひとりでも何かひとつでも
愛せるものを抱きしめた時には
その温もりで怪我をする前に
教えてあげたいパスワードの音


自由詩 空白 Copyright ミナト 螢 2019-11-16 06:28:13
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