自分史(音楽事務所勤務時代12 ー 幸せなひととき)
日比津 開

 娘は通院、治療、入院、手術を繰り返して
いたが、だんだん通常に近い生活ができるよ
うになってきた。歩けるようになり、カタコ
トの言葉が話せるようになると、娘とよく遊
んだ。

 一番楽しみだったのは、近くの公園に手を
繋ぎながら行き、ブランコやすべり台で遊ん
だり、公園内を鬼ごっこして駆け回ったこと。
娘が『パパ、待って、待ってよ!』と言いな
がら、二人でぐるぐる回ったことを鮮明に覚
えている。

 公園のあとは、たいてい運河に行った。ユ
リカモメと遊ぶためである。パンを持ってい
くと、ユリカモメたちがたくさん集まり、中
には顔の近くまで寄ってくる鳥がいて、パン
をあげて食べる姿を見て娘は喜び、はしゃい
だ。家内は最初パンをユリカモメにあげるこ
とを渋っていたが、僕と娘が外に遊びに行け
ば自由な時間になるので結局2人にパンを持
たせてくれた。

 娘は小さい体なのに食欲は旺盛で、特にブ
ロッコリーやイチゴが大好きだった。イチゴ
などは1人でワンパック全部を食べてしまう
勢いだった。『こえー(これ)、いいよ!!』
と叫びながら食べるのが可愛いかった。

 娘との触れ合いで一番感激したのは、たと
だとしい言葉だったが、自分の名前をフルネ
ームで僕の前で言ったときだった。その感激
を義父に伝え、義父も大喜びした記憶がある。
結婚生活では、やはりこうした娘とのことが
一番幸せに感じた。本当にかけがえのないひ
とときだった。



散文(批評随筆小説等) 自分史(音楽事務所勤務時代12 ー 幸せなひととき) Copyright 日比津 開 2019-11-12 02:34:53
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