小さな秋
帆場蔵人

ちいさい秋みぃつけた、と
歌う、子らがいなくなって
久しい庭で百歳近い老木が

風にひどく咳をする
また長く延びる影を
煩わしく思った人が

老木を切り倒して
春には明るい庭で
山は桜に宴を開く

夏は乳母車を押して
川のせせらぎがいく
わたしは眠りのなか

やがて晩秋という
秋の末っ子が切り株の
年輪を数え終わる頃

切り株に桐の葉が傘をさす
わたしは葉陰で眼をさます
桐はきりなく天を突き刺す

のびあがっていく、冬をつん裂いて
春、夏、秋、冬、のたくさん子ら
数限りなくまた歌に興じている

ちいさい秋、みぃつけた

わたしは葉陰で眼をさまして
晩秋という秋の末っ子の歌に
耳をすましている、小さな秋


自由詩 小さな秋 Copyright 帆場蔵人 2019-11-06 22:17:04縦
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