風向き
ミナト 螢

髪の毛が透ける光の中を
くぐり抜ける間に出会えたら

天使の輪を指にはめようとして
背負った鞄が翼になるよ

もう届かないと気づいたところで
有刺鉄線が爪を立てるから
その棘で破れた心を離す
これ以上は進めなくなったな

こっちを向いて吹く風はいつも
寂しさだけを伝えてくるけれど
誰かのために走ることがあれば
新しい道が生まれるのかな

髪の毛を掴む空気の中を
逃れるように降りた階段で

どこまで行けるか分からなくても
虹の始まる場所は知っている

側にいて刻む時間の幅が
増えていくような魔法の風に

ひとりでもふたりでも乗りたくて
電子レンジの扉を開いた


自由詩 風向き Copyright ミナト 螢 2019-11-04 06:35:00
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