自分史(音楽事務所勤務時代 3 ー 企業・団体回り)
日比津 開

 チケットの販売は、アシュケナージ(ピアノ)、マイ
スキー(チェロ)、イ・ムジチ合奏団などの超一流アー
ティストは苦労せず売り切れるが、初来日の若手アー
ティストの公演などではたいへん苦戦し、ホールの客
席をなかなか埋めることができない。
 そのためDMを発送したり、学校や企業・団体を回り
チケット販促をしていく。それを僕が中心となり、やっ
ていくことになった。

 DMはチケット予約販売システムのパソコンが導入さ
れたことにより、過去の購入履歴からオーケストラ、
ピアノ、バイオリンなどのジャンル別にリストを出せ
るようになり、公演規模によって違うが1回で2000~
7000、8000通のDMを発送した。

 発送の準備には人手が必要なので、僕が東大や慶応、
お茶の水女子大のオーケストラを回り、アルバイトを
募集した。よくやってくれる4~5人の子には、電話予
約の受付やコンサート会場でのプログラム販売なども
手伝ってもらうことにした。

 学校や企業・団体回りには、前職の記者時代の経験
が大いに役立った。三菱商事や伊藤忠商事などの総合
商社、三菱重工などの大手産業機械メーカーに取材し
ていたことから、大企業の福利厚生の一環としてコン
サートのチケットを紹介、販売していくことを思いつき、
提案した。

 学校関係では上記の大学オーケストラや武蔵野音楽
大学、国立音楽大学を回り、チラシ、ポスターの掲示
をお願いしていった。
 こうしたことにより、企業・団体のチケット販売の
取引先は50ほどになり公演によって数百枚から千枚を
超えるチケットを販売した。

 企業・団体回りは僕が入社する前から行っていたが、
マネージャーが主に動いていて片手間場当たり的であ
まり効果が挙がらなかったのを僕が組織化することに
より、DMと並ぶチケット販売の柱とした。


*チケットの予約販売システムは、それまでボードに
ホールの座席表を貼り、予約があると座席表のマスを
鉛筆などで塗り潰していたのを一変させた。
 今では当たり前になっているがパソコン内にサント
リーホール、東京文化会館、NHKホール、東京芸術劇場、
紀尾井ホールなどの主要コンサート会場の座席表を入れ、
電話予約受付時にその場で席をスムーズに押さえること
ができるようになった。


散文(批評随筆小説等) 自分史(音楽事務所勤務時代 3 ー 企業・団体回り) Copyright 日比津 開 2019-11-03 10:24:24
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