ミジンコ
Wasabi

中学で仲良くしていた友人と、別々の高校に行ったあと、大学生になった頃に、その友人が駅前のケーキ屋さんで働いている、なんてどこからか聞いたので、ケーキ屋まで会いに行ったんです。約束もせずに。

ケーキの並ぶ明るいショーケースを挟んで向こう側に、友人が期待通りに立っていて、思わず笑みがこぼれちゃったんです。嬉しくてね。そしたら開口一番、「なに笑ってんの」って不機嫌そうに言われたんです。(エッ?久しぶりに会えて嬉しいからに決まってんじゃん···)て不思議に思ったんですが。

それから何年も経ってから、私とは音信不通だったのに、別の友人Y子とは時々会っていた、と聞いて思いましたよね。(ああ、私のことはそれほど好きじゃなかった···のね···。)

なんというか。そんな感じ、つまり自分にとっては大好きな友達でも、その友達にとって私は大して大切でもない知り合い(?)だったことが、なかなか随分ありまして。

思うに、私は二十数年経った今でも独身子無しのシングルライフなのに対して、私が友人だと思っていた人たちは、みんな家庭を持ち忙しく働いているわけで。未来にそういう大切な出会いを控えている人には、わたしなどミジンコみたいな存在なんです、きっと。そう考えると、ニヤニヤしちゃって「なに笑ってんの?」って不機嫌になる気持ちも納得できちゃうんですね。

ミジンコはそういう残念な経験て結構あるんです。でも自分だけじゃないな、というのは分かる。どこかにまた別のミジンコがいる、これは圧倒的に心強いんです。だから安心してミジンコでいられるのかもしれません。






散文(批評随筆小説等) ミジンコ Copyright Wasabi  2019-11-02 15:20:58縦
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