好きなピアノ協奏曲
日比津 開

好きなピアノ協奏曲を4曲選んでみた。コンサートで
聴きたい曲と言っても良いかも知れない。順位は付け
られない。思い浮かんだものから挙げていく。


1 ブラームス 第1番

 以前は2番ばかり聴いていた。リヒテルとNHK交響
楽団が共演したのをはじめ、2番ならコンサートで何
回も聴いている。
 しかし、数年前クララ・シューマンの映画のエン
ディングでクララがブラームスの第1番を弾いている
のを観てからは、こちらのほうが好きになってきた。
運命的、劇的な出だしで、2番と比較すると作品の
完成度、バランスは悪いが若いブラームスの内に込
めた情熱のほとばしりが感じられる。
 残念ながら、第1番は実演でまだ聴いていない。
早くその機会がこないか、心待ちにしている。


2 ラヴェル ト調長

 第2楽章を聴いていると、あまりに美し過ぎて
涙が出てくる。悲しい涙ではない。愛おしさ、幸
せで胸が一杯になってくることから出る涙だ。
 映画「のだめカンタービレ」で、のだめが第1楽
章のジャズ的なスイング感のある楽しい旋律が気に
入り、千秋先輩の指揮でオーケストラとの共演を望
む場面があるが、僕は第2楽章がこの音楽でなかっ
たら、特別好きにはならないだろう。昨年、旧北ド
イツ放送交響楽団の来日公演でこの曲を聴いたが、
ピアノがエレーヌ・グリモーから代役となり、超
がっかりした。


3 ベートーベン 第4番

 ベートーベンのピアノ協奏曲は第5番「皇帝」が圧倒
的に演奏される機会が多いが、僕はしずかに淡々とはじ
まる第4番のほうに魅力を感じる。
 以前、女性服だったかテレビCMにこの曲が使われた
が、エレガントな女性を表すのにふさわしい、きれいで
上質、上品な作品だ。僕が恋人と一緒に聴きたいNo.1
の曲。
 第1番、2番、3番には瑞々しさ、緊張感があり、やは
り「皇帝」よりはこちらをより聴きたい。


4 プロコフィエフ 第3番

 先日、映画「蜜蜂と遠雷」を観た。ピアノ・コンクー
ルの本戦で主役の一人がこの曲を弾く場面があるのに惹
かれて観る気になった。
 美しい、きれいという作品ではない。とにかくスリリ
ング。ピアノ、鍵盤楽器というより、打楽器の演奏みた
いで、第3楽章のある部分などまるで宇宙でたくさんの
流れ星がきらめいているように感じる。
 数年前に広上淳一指揮、ピアノはユジャ・ワンだった
か、京都市交響楽団の定期演奏会で聴いたのは迫力満点
で忘れられない演奏となった。

5 その他

 ラフマニノフだったら2番よりスケールの大きな3番を
聴きたい。同じくラフマニノフのパガニーニの主題による
変奏曲も魅力的だ。
 モーツァルトは20番以降ならどれでも聴きたいが、1曲
選ぶとすれば24番あたりか? ブレンデル、東京フィル
の演奏会が心に残っている。
 シューマンとグリーグのピアノ協奏曲は似ているところ
があるが、やはりシューマンのほう優れているだろう。特
に第2楽章の静かな心の揺らめきを映すような間奏曲、
第3楽章の弾むような旋律はシューマンならではだ。
 チャイコフスキーは、何か大げさに感じられてあまり聴
く気にならない。若いときにレコード、コンサートでたく
さん聴いた。それで十分だ。
 ショパンは、協奏曲を聴くよりはソナタなどのピアノ曲
を聴きたい。




散文(批評随筆小説等) 好きなピアノ協奏曲 Copyright 日比津 開 2019-10-30 05:37:48
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