秋の灯
秋葉竹



いちめんの漆黒の空に
銀色絵の具を 振りかけて
秋 星座 またたく 地上には すすきゆらす風

生きて味わった苦しみが
嘘でもあるかのように消えていき
一日を そこそこ懸命には生きたはず
散歩道 軽やかにリズムをとって歩くと
懐かしい夕餉の匂いが
あちこちの家の灯りからもれてくる

いままで泣きたいことはあったけど
死なずにはいさせてくれた誰かさん
それを神というなら神さんに
この 星空えがいた透きとおったデッサン力ふくめ
甘ったるい憧憬で心で手をあわせて感謝する

少しならだまされてあげてもいいよ

いちめんのすすき野をわけいって河原に出る

いままでのそれでも均等だった年月
平凡とか異端とか賞賛とか罵声とか
喜悦とか懊悩とか号泣とか微笑とか
人の形として潜り抜けてきただけさと
一人で納得していたが
けっしてそうではなかったと今夜答えをもらったよ

いちめんの漆黒の空に
白色絵の具で 円 描く
月あかり かがやく 地上には すすきゆらす風

ほんとうに優しいのは月光

ねぇ あしたも降りそそぐ?







自由詩 秋の灯 Copyright 秋葉竹 2019-10-29 00:57:59
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