籠のなかの鳥
こたきひろし

あなたのもとに嫁いだ日に
鳥籠ひとつ持ってきました

ずっとずっと女になってからも
大切に飼っていた鳥だから

これまでに
一度だって逃げようなんてしたことなかったのに

あなたのもとに嫁いでほんのしばらくしたら
餌をあげている途中に
隙をみて逃げられてしまいました

空が美しく晴れ上がった秋の昼下がりに
何で何で何で
と悔やみましたが
雛の時から大切大切にしてあげたのにと
いっときうらみもしましたが
やはり解放されたかったんだろうと
ゆるしました

それは私が愛しい人の胸に飛び込んで
結婚というある種の籠のなかへ
自らのぞんで囚われた
この身への
裏返しかもしれませんでしたから


自由詩 籠のなかの鳥 Copyright こたきひろし 2019-10-20 09:23:55
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