旅立ち
ミナト 螢

ざわめきの外に取り残された
ストーブの匂い何を焦がしたの

長靴を脱いで履き替えたブーツ
その高さまで減らない思い出は
缶コーヒーのプルトップを引いて
魔法みたいに飛び出す泡のよう

胸の内側で留まる気持ちを
花束の棘で潰す時間が

駅の構内の時計とは違う
針を指すような幻を生きた

どんな会話も途切れてしまうけど
点滴に良く似た足音を聞く

終わりが来るのを疑いながら
繋ぐ掌をはみ出す切符が
改札をくぐり泣いて笑った


自由詩 旅立ち Copyright ミナト 螢 2019-10-19 07:52:11
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