天泣ファンタジー
草野大悟2

 優しさだけがある人のなかに 太陽がおちて 夕焼けが終わった
   冬の空より退屈な人ね
 ひなた雨がいう
 そういう雨も そうとうに退屈なかおをしていて おれも ついおおきなあくびをした
 あくびが
   ぽわんぽわん
 ちいさな音をたてながら ちいさな虹を描いてゆく
 虹のなかに
   おーんおん おーんおん
 ふりつづける ちいさな言葉がみえる

 あくびと言葉が風にのり 螺旋となって 天へと還ってゆくが
 きみ という言葉だけは どこにも飛ばずに 手のひらで羽をうごかしている

 ながめていると ふってきたのだ 骨が
 おれの深いところに とつぜん
 
 会いたかったのか 青からこぼれおちたのか
 てれ笑いをうかべている骨を おもいっきり抱きしめると
   ふふふ
 となつかしい声がした
 そのとき 
   カカカカ
 仏壇の奥で これまで長い間 ずっとくすぶっていた烏が
 嗤いながら 青空へと消えていった


自由詩 天泣ファンタジー Copyright 草野大悟2 2019-10-17 10:40:57
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