或る詩人への追悼詩
服部 剛

あの日のあなたが立っていた
この舞台に僕は今、立っている
あなたの闇に
何もできなかった僕が
今宵、一つの約束をするために

もうこれっきりだと僕は言わない 
体を脱いで空に溶けたあなたの旅は続き 
その面影を忘れずに 
僕等の日々も続くのだから

一昨日おととい あなたを、友と偲んだ
昨日 ふいに頬を伝った涙が 
今夜の朗読会に僕を連れてきた

ここには 汚れも聖なるものも合わせ飲む
たましいの光る人々がいる

ここには 一人ひとりの漆黒しっこくを集めて
夢の一瞬を垣間見かいまみる人々がいる

詩人達の言葉が飽和する夜を後に
家路に向かう一人の道で
空に浮かぶ ? の文字に問われ
僕は答える

詩人うたびとは言葉を求めて、旅をする 
今日を積み重ね…歩いてゆく
ふり返る背後に道があるように

いつか 光のなかで人影が肩を並べる
言葉のうたげで会う日まで
僕はこの世界で
人と人の間に宿る宇宙を探す 
〝9さいの詩人〟の
優しさと痛みとまなざしを忘れずに

――では、また

去りゆくあなたの瞳を見て
僕は右手をそっとあげる 



 *ともちゃん9さいと出逢ったのは二十年前のオープンマイクでした。
  個人的にゆっくり話すことはありませんでしたが、
  同じ頃からポエトリーリーディングの活動をしていた一人として 
  この詩を書きました。
  
  以前に僕が高田馬場のBensCafeで主宰していた
  オープンマイク「ぽえとりー劇場」にも
  友達のぬくみりゑさんと共にゲスト出演してくれたことを
  今も感謝しています。

  あなたの大切な仲間を
  ポエトリーリーディングの今後を、見守っていて下さい。  





  








自由詩 或る詩人への追悼詩 Copyright 服部 剛 2019-10-14 20:46:35
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