終わりの旅
日比津 開

これまでどこをどうして
旅をしてきたのだろう?
小さいとき、夏に南の海や
北の山に幾度か
家族で行ったことは
途切れ途切れに覚えている

あの頃は父も母も優しく
弟とも仲良くしていて
食べきれないほどの
豪華な料理を前にして
はしゃいでいた
一時の家族との幸せがあった

結婚の前、恋人に会うため
北に向かう飛行機に
乗る機会が増え
未来を夢見ながら
機内からの雲
窓の下に広がる海に
見とれたことを覚えている
しかし、それも遠い昔となった

娘を亡くし、独身になったとき
毎週、日帰りの旅にでた
城跡や古戦場を巡り
寺社に参り、祈りを捧げた
『何もできなかった私を許し
天国では幸せになってくれ』と

そしていま、また新たな旅に
出ようとしている
見知らぬ地を訪ね
東に行くか、西に行くか
懐かしい地を再び訪ね
南に行くか、北に行くか
まだ決めかねている

恐らく今度が人生で
最後の旅になるだろう
旅の終わりに見る景色は
どんなものだろう?

もう二度と元の場所には
帰ることがない旅ー
だから、行き先をしっかり定めたい


自由詩 終わりの旅 Copyright 日比津 開 2019-10-12 21:46:59
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