私は何を遺して?
日比津 開

私は何を遺して
この世を去ってゆくのだろう?
子や孫を残して?
しかし、彼らは別の人格を持ち
私からは離れた存在となり
年月の流れに
私はだんだんと影を薄くしていく

それでは映像や写真を?
確かにその時々の
私の姿、声は残る 
しかし、それは私の日常生活の
一端を見せるに過ぎない


それならば、詩やエッセイはどうか?
たとえ書き残しても
誰にも発見されず
一度も読まれないことは
承知している

しかし、そこには私の内面、思い
精神を映し、一瞬一瞬生きた証を
示すことができる
だから、詩、エッセイを今日も
こうして記す

死が私に訪れるまで
あと幾つの作品を
残すことができるだろう?

もちろん、不朽の名作を
私が産み、残そうなどとは
少しも考えていない
だから、書くことは
少しの苦痛でもなく
ごく私的な狭い世界を
自由に楽しんで書くことができる

これが、死して私が遺せるものー
残した作品の中に
私は生き続ける
たとえ明日、私の命が奪われても
こうしていくことができたら、
この人生に少しの後悔もない



自由詩 私は何を遺して? Copyright 日比津 開 2019-10-11 03:46:55
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