台風前夜に
こたきひろし

ひっそりと静まりかえっていた
台風前夜の市街

もしかしたら明日には
街中が粉々に砕け飛んでいるかもわからない

不安と胸騒ぎ
備えたい
備えたい

食べ物
飲み物
車のガソリンを
満タンに

お風呂に水を貯めて
空のペットボトルにも水道の水を

思い出してしまった
震災の時の恐怖

あの時は
断水
長期停電

地震は前触れもなく来て
余震に怯えた

しかし
台風は発生から
勢力の発達も
進路の予想も
逐一情報が得られる

なのに何でやねん

早めの避難とテレビが言っても
ずるずると家にしがみついては
離れたくない

命を守る行動したいけれど
守れないかもしれない

この静寂が
意味するものは

神様
仏様
死んだ父ちゃん
お母ちゃん

その存在を
普段はないがしろにして
申し訳ありません

私はどうなっても言いなんて思いません
家族を
いっびきの猫を
お守りください
助けてください

拝みます


自由詩 台風前夜に Copyright こたきひろし 2019-10-10 23:05:34
notebook Home 戻る