今この時にこそ
st

なぜなのだろうか


わたしは今

書き急いでいる


まだ人生は

これからというのに


モーツァルトの

ト短調シンフォニーのような


走り過ぎてゆく悲しみが

押し寄せてくる


しずかな夜を殺す

サイレンの音がなり


遠くで

地震が

地獄の門をひらき


大風が

死者を天空へ

連れ去る


かくも人生は

はかないのだ


わたしは書かねばならない


うつくしい花たちを

鳥たちを


青空と太陽

そして

風と雲たちを



つらなる故郷の

山々と

紺碧の海を



やさしい愛で

つつんでくれた

いとしい人を



走り過ぎてゆく悲しみが

押し寄せてくる


今この時にこそ






自由詩 今この時にこそ Copyright st 2019-10-06 07:03:20
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