幻想交響曲(ベルリオーズより)
日比津 開

第1楽章 夢と情熱

まだ本当の恋を知らない若者は
ときに言いようのない恐れ
不安にさいなまれる

恋人との出会いー
若者の夢と情熱が
恋人の旋律、動機を創り
その姿を次第にはっきりさせ
若者の胸を占める

夜の街、嵐の中を若者はさ迷い
恋人を忘れようとするが
旋律は激しさをますばかり
もはや疲れ果て眠るときしか
若者の平安は得られない



第2楽章 舞踏会

華やかなワルツ
舞踏会で若者は再び
恋人に出会う
しかし、彼女は
他の男の腕の中で踊り
若者には気付かない

『僕と踊って下さい!』
と言えない若者
踊りの輪に消えて行く
彼女の姿を追うばかり
ワルツに恋人の旋律が入り
舞踏会は更に
華やかさをましていく


第3楽章 野の風景

若者は街を離れ
野の風景が広がる
草原にひとり寝転ぶ
恋人の旋律、影は
ここにはなく
しばしの平安を得る

どこからか1本の角笛が
草原に響き、やがて
もう1本の角笛を加えると
静かな対話のように
若者の耳に届く

しかし遠雷が角笛に加わると
若者の平安は次第に
打ち消され、恋人の旋律が
ここにも現れる
『彼女に嫌われたら…』
不安が胸に広がっていく

若者は草原を離れる


第4楽章 断頭台への行進

若者の思いは通ぜず
ついに恋人を殺してしまう
罪に問われ、断頭台へ
そこに向かう行進は
おどろおどろしく
処刑場は非難の群衆で
幾重にも囲まれる

断頭台の階段を上り
恋人の旋律が一瞬流れるが
すぐに運命の音が響き
若者は断頭台の露と消える

第5楽章 ワルピルギスの夜

魔女たちが集う夜に
若者はいる
その中に恋人の姿を発見するが、
彼女はもはや美しさを
とどめていない
恋人の旋律が流れるが
歪められ、ケタケタケタと
魔女たちの嘲笑に変わる
もはや若者は救いようもない

若者の夢と情熱は
ついに幻想の中に終わる 



自由詩 幻想交響曲(ベルリオーズより) Copyright 日比津 開 2019-10-05 19:10:15
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