りんご王女の側近
la_feminite_nue(死に巫女)

風景画のように澄んだ風景のなかに、ゆれて。
りんご王女が顔を赤くするから、すこしうつむき──
 
ぼくは窓のそとを王女が眺めるままに、
王女の髪と景色とを見ていたんだ。
 
水彩画のように淡い風景のなかに、ゆれて。
ただよい、王女はやわらかに口をひらいた。
 
アレグレットからアダージョ、
アダージョからモデラートへ、王女の歌ははずむ。
 
たゆたう時間のなかに、ぼくはゆれて、
りんご王女がふしあわせを見ないように、祈っていた。
 
ぼくはたゆたう。王女とともに。
口ずさむ、彼女に合わせることはできないけれど、
 
こころのなかで、秘めやかな伴奏をする。
風景画のように明るい風景のなかに、ゆれて。
 
瞳をとざせば、なにもかもが聞こえる。
耳をおおえば、なにもかもが見えるのだろう……
 
ぼくはたゆたう、目をみひらいて。
王女は口ずさむ、髪をゆらせて。
 
アレグレットから、アダージョ。
アダージョから、アンダンテ。しずかに、自然な──。
 
すこしだけ、見えない。
すこしだけ、聴こえないよ。
 
風景画のように澄んだ風景のなかに、ゆれたら、
アレグレットから、アンダンテ。……いいえ、
 
りんご王女は、髪をさそわれて、風のなかへと、
ふみだしてゆき、そのまま、世界のそとへ……
 
アレグレットから、モデラート。
モデラートから、アンダンテ。しずかに、自然な、


自由詩 りんご王女の側近 Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-10-04 22:11:10
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