予兆
帆場蔵人

秋月の夜の樹々のざわめき
風の卵たちが孵化しはじめ
餌を求めている誕生の産声

雛たちはまだそよ風で
樹々から養分をもらい
ゆるゆる葉は枯れ雛は
みるみる成長しながら
嵐への導火線を引いて
はらはらと落ちたまり

颱風の
発生が
告げられ

風の雛たちは息を潜め
風切羽が膨らんでいく

ふつふつ、と滾る鍋のなか
溶けかけた眼が、みている


自由詩 予兆 Copyright 帆場蔵人 2019-10-04 17:40:31
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