総天然色とはいかない世界で
こたきひろし

晴天の空色が蒼く見えるのは
それなり理由があるんだろう

夕焼けが血の色に見えるみたいに

空気が無色透明でいてくれたから
自然界の全ての色を
この眼は識別できる

でも
そこから生まれてしまう弊害も
もちろんある

人の肌の色
人の髪の毛の色
人の目の色
など

全世界の人間が
一色に統一されていなかった事で
起きてしまう
差別と偏見



もし
貴方の
貴女の
愛しい人が
顔に大きな火傷をおっておってしまったら
ケロイド条の痕が残ってしまったら

貴方も
そして貴女も

それでも
正常に機能する視力を
呪うように
なるかも知れない

この世界で視力を失い
ひたすら音と触覚に頼らざる得ない人たちにとって
色彩は暗闇の向こうの遥かなる想像の世界
なんだろう

しかし
けれどそれは
健常の眼より
美しく華麗に
配色されているのかもしれない

恵まれて光を失わないでいる
自分にとっては
どこまでも
身勝手な想像でしかないのだけれど

しかし
未来は全てかわっているかも解らない

過度な文明の進歩が
人間の個性を完全に奪い

まるで大量に生産される
機械と同じになってしまうかもしれないのだ

そうなってしまったら
蒼く晴れ渡る空にも
血の色に染まる夕焼けにも
何の感慨もわかない

キカイの視力になってしまうかも
わからない
のだよ

そうなったら
世界中の人間の
肌の色も
髪の毛の色も
目の色も
公平に統一されて

言語はひとつだけになり
偏見や差別は皆無になって
理想社会が築かれてしまうかもしれないのだ

人間の心なんか
無色透明になって









自由詩 総天然色とはいかない世界で Copyright こたきひろし 2019-10-01 23:50:35
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