空から落ちて来る雨に
la_feminite_nue(死に巫女)

希望で照らしてほしいわけでもなく、
絶望から抜け出したいわけでもない。
ただ少し、この不安を減らしてほしい。

空から落ちて来る一粒の雨に、
何個の水素が含まれているかなんて、
わたしは知らなくても良い。

そんなことは今では、
神に代わって科学者が啓示してくれる。
そう。彼らは啓示をする、「これが真実だ」と。

でも、わたしは、空から落ちて来る雨に、
何粒の水素が含まれているのかなんて、
知らなくても良い。

ただ、少しの希望や少しの絶望の埋め合わせに、
ほんの少し不安とは逆のものが欲しい。
それが何か……とは知らなくてもいいから。

ああ、今では科学者が神に代わって啓示をする。
それを真実だとわたしたちは思うように慣らされ、
それを諦めるようにと訓練されていく。

ただ今夜は、
どうかこの雨が少しでも少なくあればいい。
それが幾千、幾億の粒子であろうと。

今日を希望で照らしてほしいわけでもなく、
今日の絶望から抜け出したいわけでもない。
ただ少し、今日のこの不安を減らしてほしい。


わたしは空から落ちて来る雨に、
 何粒の水素が含まれているかなんて知らない……


 


自由詩 空から落ちて来る雨に Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-10-01 20:52:17
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