心が汚れるって
こたきひろし

心が汚れるって?
どんな風に

心が洗われるって?
どうやって

なんて愚かな質問

答えは存在しない

思うわけ


まだ夜が明けきらない朝
街はまだ目を覚ましていない

新聞配達のバイクが走る
バイクが停まり
新聞配達がアパートの階段をかけ上ってくる

入り口のドアの隙間から朝刊が差し込まれた
昨日の朝と何も変わらない


違っていたのは
俺の部屋に女が寝てる事だった

初めての女は夜の街で買った
俺が十九歳の時だった
事が済んだ後で女が言った
「だから童貞はイヤなんだよ。いつも自分でばかりしてるから、遅くてさ。めんどくさいし汚いし」
女は何の躊躇いも見せず平気で口にした
その言葉と態度に俺はズタズタに切り裂かれたが何も言い返せなかった
臆病で意気地無しだった
百戦錬磨の女はそれを見透かしたに違いなかった
その夜の事がずっと忘れられなかった

昨夜はほとんど寝ていなかった
寝ないでしてばかりいた

何にでも初めてがあった
男と女が初めて体を合わせようとしたとき
うまく繋がれなかった

男は焦る
女は協力を惜しまなかった
回を重ねる内に上手くいくようになった

男が女をアパートに誘い込んだのはホテル代が勿体ないと感じてしまったからだ
それは随分と汚れた心が引き起こす振る舞いに違いなかった

一旦汚れ出した心は
もはやもとには戻らないだろう
ますます汚れていって
余程の勇気と決断がなければ
洗い流せはしないだろう


自由詩 心が汚れるって Copyright こたきひろし 2019-09-28 00:34:33
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