のっぺらぼう
メープルコート


 のっぺらぼうが私に一つ菓子をくれた。
 菓子を食べたら私は大きくなった。
 恥ずかしさで私はしゃがみこんだ。
 けれども私に気付く人は誰もいなかった。

 のっぺらぼうが私にもう一つ菓子をくれた。
 菓子を食べたら私は小さくなった。
 私は人々の足を気にしなければならなくなった。
 誰にも気付かれぬまま踏ん付けられないように。

 果たして私はこの世に生きているのだろうか。
 何をもって生きていると言えるのだろう。
 生と死の境界線とはなんだろう。

 のっぺらぼうが最後に一つ菓子をくれた。
 私は元の大きさに戻った。
 それでも私に気付いてくれる人などいなかった。


自由詩 のっぺらぼう Copyright メープルコート 2019-09-27 00:56:31
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