台風のこども
la_feminite_nue(死に巫女)

台風のこどもが、道にまよって、
たけのこ半島に上陸。
でも、たけのこはじょうぶだから大丈夫。
夜じゅう風がふいたけれど、へっちゃら。
 
「おかあさんはどこかな?」
 
台風のこどもが、道にまよって、
おさかな湖を通過。
おさかなたちは水の底でびっくりしたけれど、
おとうさんさかなが守ってくれたわ。
 
「おかあさんはどこかな?」
 
台風のこどもが、道にまよって、
かいこの森によりみち。
かいこたちは桑の葉のかげで、ふるえていたけれど、
雨つぶを素敵なキャンディーだと想ったの。
 
「おかあさんはどこかな?」
 
台風のこどもが、道にまよって、
ぶどう畑に到着。
ぶどうの実はみんな落ちてしまったけれど、
これはワインにする葡萄なの。いたんでもへいき。
 
「おかあさんはどこかな?」
 
台風のこどもは、つかれてしまって、
牛さんたちの牧場で休んだの。
牛さんたちは「もう!」って、言った。
台風のこどもも「もうねむいな……」って。
 
「おかあさんはどこだろう」
 
台風のこどもは、牛さんたちの牧場で、
すやすやすやって、寝息をたてて。
台風のこどもがしずかになったら、
きっと、明日の朝には世界がきれいになって……
 
「おかあさんはどこかな?」
 
道にまよった、台風のこども。
空におかえりよ、空におかえり。
きっと、明日の朝には世界があたらしくなって、
小鳥たちの鳴き声と、空にかえる。台風のこども。


自由詩 台風のこども Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-09-26 18:20:22
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