本のお店
la_feminite_nue(死に巫女)

タネ・ホカホカの空のした、
キーウィ・バードの本屋さん。
カウリのうろにお店をひらいて、
なにを売るの? なにを売るの?
 
売りきれのない、森の本。
木の葉でできたページをめくって、
「ああ、店員さん。今日も良い天気なの」
「そうね、とっても」
 
タネ・ホカホカの空のした、
キーウィ・バードの本屋さん。
もうそろそろ、昼の日ざしが、
お店に斜めにさしてきます。
 
雲が、空にながれていったら、
すこしだけ、涙をはらって、
「ちょっと悲しいおはなしですね」
「ええ、ラヴ・ストーリーだもの」
 
森の小虫をついばんで、
──お料理の本、ないかしら?
お店のおくには、きっとクッキーや、
いろんなたべもの、隠していない?
 
店員さんは、よそっぽを向いて、
「ユーカリの葉のしおりはいかが?」
「澄んだすずしい香りがするのね」
「ええ、おすすめのしおりなんです」
 
タネ・ホカホカの空のした、
キーウィ・バードの店員さん、
キーウィ・バードのお客さん、
そろって、空を見あげます。
 
雲がまた、ながれてゆきます。
風が吹いて、風が吹きます。
……タネ・ホカホカの空のした、
ふたりの羽根にさざ波をたてて。
 
ゆっくり、やわらかな木漏れ日は、
「あれは日時計なのね、きっと」
「ええ、きっと日時計なの」
森の王、タネ・マフタが笑う。
 
タネ・ホカホカの空のした、
「あれはきっと、日時計なのね……」
「ええ。日時計なの、きっと」
キーウィ・バードの本屋さん。


自由詩 本のお店 Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-09-23 13:14:36
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