朧月夜に幻惑されて
丘白月


長い夜に溶けて
私は朧月夜の墨絵

どうして生きて行けましょう
昨日まで歌ってた虫さえ
今夜は孤独にする

窓を少し指先だけ空けて
冷たい空気を誘い入れて
毛布を包み込んで
自分を抱いて

火星が小さく赤く
朝日の火種のように
やがて窓から見えなくなって
ああもうじき朝なんだねと
追いかけて毎日追いかけて

生れたての朝は夕日に似て
赤く灯される

窓から覗いてた椿の実
もう冬の色をしてる

一輪挿しに一つ命もらう

ニラの白い花が一面に咲いて
天国を歩いているようで
鋏の音が痛い




自由詩 朧月夜に幻惑されて Copyright 丘白月 2019-09-20 18:24:58
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