自由の女神
ただのみきや

言葉のフェイクを削ぎ落し
白骨化したあなたを抱いている
突風にあばらが鳴ると
手を取ってかちゃかちゃ揺らしてみた
骨盤に唇を押し当て目を瞑る
あなたは眠りからさまよい出た夢で
青いインクで描かれた挿絵の薔薇の匂いがした
涙のように 冷たい夜が
美しい眼孔から溢れていた
わたしは
一抹の不安という命綱をとっくに捨てていて
肉体が地下水になることに慣れていた
ただ固い石だけが永劫の苦しみとして
全ての取引を拒んで袋の中に在り続けた
言葉が枯れて散る頃
虚無に絡みつく黒々とした欲求だけが露わになり
錠剤ひと粒ほどの救いを
あなたの骨に求めたのだ
どこまでも展開し続ける立体は
読めない言葉で埋め尽くされて
内にしか存在できない宇宙を宿した子宮だった
いまもかつてもこのさきも
出来事はほんの一かけらの現れに過ぎない
白骨化したあなたを愛しいている
最初から興味はなかった
あなたの言葉には
モデルルームの照明があった
作り物を否定した誇らしげな作り物だった



               《自由の女神:2019年9月16日》










自由詩 自由の女神 Copyright ただのみきや 2019-09-16 15:22:02
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