果樹園
こたきひろし

くだもの畑に産まれて大きくなった
訳じゃないの

ヒトに産まれて女に育った
あたし

中学校では
天然なのに縮れた髪が
校則に違反していると何度も注意された
髪色が黒くないからって
先輩からいじめられた

天然なのにさ

学習塾には通えなかった
周りはみんな行ってるのにさ

おうちはいつも
お金に困ってた

あたしは何もわるくない

そして
あたしは天然の馬鹿だから
授業についていけなかった

だから
あたしは学校から弾き飛ばされた

あたしは
何もわるくない

不登校
引きこもり

ある日
クラスメートが家にきて手紙を置いていった
中身は登校を促していた

でもそれは
担任に頼まれたからに違いなかった
クラスメートはみんなあたしをはぶいていたんだから

ある日
民生委員を名乗るおばさんがたずねてきた
あたしは両の耳をふさぎ
母親は玄関のドアを開けなかった

あたしは果樹園に苗木を植えられて
育った林檎じゃなかった

背中に羽がはえてもいなかった

ヒトに産まれて女に育っていく
その課程に
ちょっと黒い歴史があっただけ

黒い歴史があっただけ


自由詩 果樹園 Copyright こたきひろし 2019-09-15 09:14:48
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