蝿になってしまった
こたきひろし

どう、ハエになった気分は?ついさっきまでは人間でいられたのにさ。

どうって?あんただって立派なハエになってるわよ。

鏡に写して見てみたら
あたしの目にはハエになったあんたしか見えないわよ。

俺もお前もハエになっちまったんか?

なっちまったわね。

この先どうやって生きていけばいいんだ?

簡単よ、ハエになって生きればいいのよ。

お前は強いな。呆れるよ。

強くなんてないわよ。

俺たち今まで通りでいいんだよな。ハエになっても。

そんな訳ないでしょ。ハエになったんだから。

あたしたちここで別れよう。

えっ?何でだよ
これまで仲良くやってきたじゃないかよ。

それは二人とも人間だった時の話しでしょ
ハエになったんだからハエらしく生きるわよ。あたしはね。

どういう事さ?

あたし、あんたと別れて他に男見つけるわ。
だからあんたも女探してものにしなよ。

やだよ。俺はお前がいいよ。

やだよ。あたしはあんたに飽きてるの。
人間の間は我慢してきたけどさ。

もうハエになったんだから自由に恋愛するわよ。
そして沢山赤ちゃん産みたいの。世界中あたしの子供でいっぱいにしたいの。

だから
あんたはあんたで他のハエの女に自分の子供産ませたら。

えっ?
女は子供を産むキカイなのか?
お前はそれで幸せなのか。

あんたにそれ言われると胸に痛むわね。
考えをあらためるわ。

早いな。いいけどさ。どんな風に変えるのさ?

手っ取り早くあんたの赤ちゃん産むわよ。せっせとせっせと。

お前、頭のなかがハエだなぁ。


自由詩 蝿になってしまった Copyright こたきひろし 2019-09-12 06:59:39
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