本を開いて本を閉じる
la_feminite_nue(死に巫女)

本を開いて、
本を閉じる。

むかいの席の奥さんと、ふと目があったなら、

あのひとは、わたしが辞めた会社にあとから入ってきたひとの、
知り合いの親戚の家族の友だちなんだわ、

きっと。

だから電車のそとを風景だけがながれてゆく。
ひかりはまばたきもせず。

本を開いて、
本を閉じる。

眠りたい目が、そっと瞳をあげたら、
どこかで「おはよう」とささやきながら、
飼い犬の首輪についた鎖を優しく引いている手。


自由詩 本を開いて本を閉じる Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-09-11 16:33:47
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