自分じゃないと思っているだけ
Lucy

今までたくさんの人と知り合ったり別れたりしてきたけれど
引っ越しだとか転勤とか卒業とか就職とか
そういう物理的な別れを越えて付き合いを続けてきた人はたくさんいる
元同級生とか同僚とかママ友だとかご近所さんとか
元同人とか恩師とか

長続きしてきたほとんどは双方合意によるものだ
関係を続けたいと願った人には失礼のないように心配りを続けるし
人として、まっとうな態度をとるように常に心掛けている
だからいいお友達がたくさんいると思っていた
でも関係が続かなかった人との別れは
そのほとんどが一方的な私の決断によるものだ

嫌いになったとか幻滅したとか尊敬できなくなったとか
独断と偏見でわたしが勝手に決めつけた
一度そう決めた相手がコンタクトを求めてきたりすると
もう嫌でたまらなくなって
鼻先でぴしゃりと扉を締め切るような身もふたもない態度で縁を切ってしまう
どう思われようと構わない
ふとした誤解や気持ちの行き違い
軽い一言に傷ついたとか少しの認識の違いが許せなかったりとか
小さなことが原因なのに
とにかく二度と顔を合わせたくないと思ってしまう
その人の本質を見極めたなどと思いあがって

その中に、実はお世話になった人とか感謝しなければならない人
わたしのほうがさんざん迷惑をかけた人とか
嫌な思いをさせてしまった人とかが
実はたくさんいたのではないかと考え始めると
全部言葉で説明できると思ってきた今までの平坦な道のりが
急に穴ぼこだらけの危ない道に変わってしまって恐ろしくなる
ぎざぎざの影が思い出をふさいで眩暈にかられる

人を傷つけて平気でいる人って案外自分で
礼儀知らずで常識のない最悪の人間は自分
人にしてきた酷い仕打ちのことは忘れて
上手く取り繕いながら世渡りしてきたと思っている
そういう人なら周りにいくらでもいて
ただ自分じゃない
自分は違うと思っていた




自由詩 自分じゃないと思っているだけ Copyright Lucy 2019-09-10 21:41:52
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