空が空の歌を歌っているのだろう……
la_feminite_nue(死に巫女)

椅子に坐っている。
その椅子は一脚の椅子で、
遠く空を眺められる。

それでもその椅子には二本しか足がなく、
片側にふれれば、わたしが揺れる、
片側にふれれば、世界が揺れる。

あの空の高まりとはつながりがなくても、
わたしは空を見つめている。
わたしすらが空に包まれるのではないかと。

不安定な椅子の上で、
わたしと世界がゆれる。
ぴったり、ひたひたと……

いつかわたしは椅子から立ち上がって、
恋したあなたのことも、世界のことも忘れ、
あの雲と一つとなるのだろう。

そして気相と混じりあったわたしが、
砂地にさされた一脚の椅子に、
かるい思いを乗せる、手紙として。

「わたしはもうここにはいないわ」
「あなたももうここにはいないわ」
「わたしはかつて、ここにいたわ」

崩れることのない一脚の椅子、
決して倒れないそれを、
見守るのは誰なのかしらね?

はるか頭上では名前も知らない鳥たちが、
しきりに呼び声をあげる。
「ここへおいで、ここでおいで」

空が空の歌を歌っているのだろう……。


自由詩 空が空の歌を歌っているのだろう…… Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-09-07 18:11:37
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