想音
木立 悟
風と鎖の音のむこうに
草木のまばらな原があり
銀と灰のはざまによせて
静かに蒼をしたためている
夜の生きものが見つめあい
互いの光を聴いている
遠く見知らぬ空にまで
姿は響き 響いてゆく
やわらかな火が伝うように
蒼は淡いはざまに届く
銀と灰はこぼれつづけて
声と言葉をくりかえす
痛みはなく
苦しみがあるのでした
汗は冷たく
手のひらは熱いのでした
はじまりと終わりを貫いて
一本の鉄の柱が立ちつくしていて
そのふるえが夜であり
わたしであると思えるのでした
消えかけた雪の粗さから
分かれては戻る車輪の音
照らすもののない道に残された
夜の雲の軌跡をなぞる
生きものの光は去ってゆく
にぎやかな声が近づいてくる
手のひらの波にひたされて
原は滴をしたためている