想音
木立 悟




風と鎖の音のむこうに
草木のまばらな原があり
銀と灰のはざまによせて
静かに蒼をしたためている


夜の生きものが見つめあい
互いの光を聴いている
遠く見知らぬ空にまで
姿は響き 響いてゆく


やわらかな火が伝うように
蒼は淡いはざまに届く
銀と灰はこぼれつづけて
声と言葉をくりかえす



痛みはなく
苦しみがあるのでした
汗は冷たく
手のひらは熱いのでした
はじまりと終わりを貫いて
一本の鉄の柱が立ちつくしていて
そのふるえが夜であり
わたしであると思えるのでした



消えかけた雪の粗さから
分かれては戻る車輪の音
照らすもののない道に残された
夜の雲の軌跡をなぞる


生きものの光は去ってゆく
にぎやかな声が近づいてくる
手のひらの波にひたされて
原は滴をしたためている









自由詩 想音 Copyright 木立 悟 2005-04-03 17:42:04
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