星と星
la_feminite_nue(死に巫女)

 暗闇の中であなたは生きているのでしょうか。私には測りようもない心のあり様を、薄明の海のように思っている。もしも暁闇の中で生きているのだとしたら、その目はかすかに事物を凝視しているに違いない。わたしの中にある火が、わたしの身と心とを焼き尽くす。あなたは一個の炎と化して、その身を龍のごとく炎上させているのだろう。透明な一個の火。わたしが炭のように焼き崩れている時に、あなたは透明な炎として燃え上がっている。わたしには触れることの出来ない火。その炎のような体は、人の中にあって透明な色彩に紛れているのだろう。透明な炎として人と話し、人の声を受けとめる。あなたの炎が他者を焼かないのはどうしてだろう。わたしのように身体が燃え尽きていないからだろうか。無限の燃料をその身に蓄えているからだろうか。あなたという人は恐ろしい、その透明な炎がすべてを覆ってしまう。わたしは燃えかすのような薪の一片にすぎない。さすればあなたは原子の輝きだろう。身の内にすべての力を宿している。透明な炎が人に触れる時、触れられた者はどう戦慄するのだろうか、それとも澄明な安らぎに包まれるのか。沈黙の湖、嘘の水辺にあって、わたしはわたしの火を消す霧雨を探している。あなたは炎であって、やがて自ら燃え尽きようとする、恒星のような存在だ。引き付けられた者は、遊星のようにやがてその周りを巡り始める。やがて潰える炎、無限とも見える時間を燃え盛る一個の火。わたしには知りようもない、その心の中にある様々な思い。あなたは全てを受け入れたのだろうか、わたしにはなすすべもなく、一つの矮星のようにその巡りを漂っている。ここにあるのは、引力か斥力か、つながりや関係性があるのかどうかも分からない。無限。あなたとわたしの間には、一つの距離だけがある。その距離だけが、わたしとあなたとを測る術だ。あなたは生き、わたしは死ぬ。死ぬまで燃え続けるあなたとともに、燃え殻となったわたしがその周囲を漂う。人はそれぞれ一個の星だろう。あなたは重力の枷を離れて、その地平線の向こうにいる。境界の外側に常にいるわたしは、あなたの全てを知り得ない。


自由詩 星と星 Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-09-06 15:11:38
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