レプリカ(四篇)
からふ


(Sample1.)

地図の中では
私、鳥になることが出来た
このどうしようもなく腫れぼったい目が
磨りガラスを通したように薄い朝焼けを映していて
二度と乗ることもない列車で恋をしてしまうように
美しい誤差をまた地図に刻み続けるのであった



(Sample2.)

死んだ祖父は
ひどく着色料の入った炭酸飲料を好んだ
あらゆるものの影が
限りなく透明に近いその色を失うとき
たくさんの色素が生みだされて
やがては忙殺されてゆく



(Sample3.)

こまやかな細胞は雨のように消費されていく
脱ぎ捨てた服の上で汗が蒸発するみたいに
セックスのことをエッチと言う人を
私は基本的に信用したりしない
イコールを鵜呑みにしないようにするのと同じだ
(唐突なスピードでイメージは加速していく)



(Sample4.)

比喩が暴走している
これだから夜は怖いと言うものだ
ゆっくりと街灯が朝に溶けていく
私が沈黙を咀嚼しているうちに
驚くべきしくみで
世界は昨日を終わらせたのだろう


自由詩 レプリカ(四篇) Copyright からふ 2005-04-03 16:10:12
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