「空とシャツ」または「青とワインレッド」
la_feminite_nue(死に巫女)

 おじいさんのシャツは、淡い色のワインレッド。青空の下で、しかめっ面。もしかしたら、そのシャツが似合わないと言われたのかも。気に入って買ったのに、嬉しくて持ち帰ったのに、「似合わないよ」って、言われたのかも。青空の下のしかめっ面は、何層もの花弁を持つガーベラのようで、小さな悲しみが心の表に繰り込まれていく。何が正しくて移ろうのか、何が悲しくて彷徨うのかを、わたしは知らない。あなたの淡いワインレッドのシャツが、あなたの悲しみを濃くしていたの。「どう?」「あなたには似合わないわ」「そんなことないだろう?」「似合っていないのよ」幻は幻。わたしのイメージは青空の下に消えていく。……でも、おじいさん、あなたにもしも伴侶があるなら、あなたは幸せという時間を生きている。軽く触れれば、軽く跳ね返る。軽く叩けば、そっと受け止める。それは、希望。わたしではないものがわたしではないように、あなたではないものもあなたではない。淡いワインレッドのシャツは、あなたの悲しみの色。その理由をわたしは分からない。青空の下で、おじいさんの顔は、クレープ色のガーベラのような、しかめっ面。


自由詩 「空とシャツ」または「青とワインレッド」 Copyright la_feminite_nue(死に巫女) 2019-09-03 17:07:49
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