まねごと――悲哀のもどかしさ
ただのみきや

互いから目を反らすため見るテレビテープを貼った風船に針

見開いて水に倒れた金魚の目土葬にした日の絵日記帳

酒が止み雨に酔ったら螻蛄ケラの声死ぬまで愚直に夢を掘り

四十万にも始まりありと邯鄲カンタンは黄の花房に弓を休めて

時を経て忘れられる人られぬ人胃を裂くような嗚咽を隠す



靴音のタクトが響く朝に絵画たちの沈黙はフォルテシモ

里子に出たか継母からしからぬ声の鴉に問うては笑う

海のない土地で育ったからいつまでも他人のまま愛していた

鴎たちが美しい刃になって奪いに来る凪ぎだからこそ

揃えた靴が太陽に熟れ旗竿に踊った誰もいない白



   
                    《2019年8月31日》








短歌 まねごと――悲哀のもどかしさ Copyright ただのみきや 2019-08-31 21:01:38縦
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