makeloveがしたくて
こたきひろし

目的地は海。休日に彼氏の運転でドライブした。
海はいい。いつ行っても広くておおっきいわ。
彼氏もあたしも季節外れの海が好き。でも誰もいない海はなかった。
海にはサーファーが波に乗ったり飲まれたりを繰り返していた。それを眺めていたら、自己責任の軽さを感じてしまった。
あたしは彼氏にサーファーになんてなって欲しくない。
多少カッコ悪くても普通がいいんだよ。
お互いに分相応の相手を自然に選んでくっついたんだからさ。そこはちゃんと世の中の空気を読んでいるから。

その内に海にも飽きてしまい、車に乗った。
彼氏の運転、ちょっと怖いけどあたしよりはましかな?
「お腹空かない?」
あたしが彼氏に言ってみた。
「減ったな。」
彼氏がそう答えたから、どっかで食べて行こうよ、と素直にわたしは言った。
「そうだな。どこがいい?」彼氏が訊いてきたから、ファミレスあたりでいいよとあたしは答えた。
彼氏の財布の中身に配慮しなければいけないし、あたしは最初から奢って貰うつもりだし。
高級レストランとか回らないお寿司屋さんなんかは求めてないから。
どうせあたしなんか安上がりの女なんだから。それ相応の男を選んだんだから。

ファミレスでお互いお腹いっぱいになれた。
お酒なんか飲めたら最高なんだけど、彼氏運転するし、あたしだけって訳にはいかないから。

それから店を出てふたたびドライブした。
まだ帰りたくはないから。しばらく走っていた。
その内にいつの間にか周囲は暗くなってきた。
彼氏もあたしも疲れを感じはじめてきた。
お互い会話がなくなってしまったのがその証だ。
そこで彼氏が言ってきた。
「どこかで一寸休んでいかないか?」
あたしは一言で答えてしまった。
「そだねー」
あたしは内心それを期待し待っていた。

結局、ドライブの最終目的はmakeloveで。
すべてはそこに至るまでの過程だったのかな?

年頃の若いおねえちゃんとおにいちゃんの理性を崩壊させるまでの。




散文(批評随筆小説等) makeloveがしたくて Copyright こたきひろし 2019-08-30 23:39:25
notebook Home 戻る