雨で
……とある蛙


雨の中を歩く人
雨の中を急ぐ人
雨の中をゆったりと

雨は霧のようにとりとめもなく
雨は上から落ちてくる
上が空とは限らない

無数の穴があいている
無数の裂け目が開いている
無数の涎が垂れている


雨に向かって顔を向け
空に向かって顔を上げ
雲に向かって顔を向け

嫌みの一つも言おうとしている
そのうち笑顔に変わってしまい
絞り出るのは唸り声


雨の交差点に突っ込む老人
軽自動車のアクセル軽く
ブレーキほどの抵抗もなく
人の列は横断歩道で
マネキン人形のように飛び上がる

老人の死に場所はココくらいしかないと
年金担当の
厚生労働大臣のたまう


世界は皆憎しみたがる
世界は皆殴りたがる
世界は皆殺したがる

防衛のためとの大義名分
先制攻撃の反復拡大

揚げ足取りの自己満足
分かっちゃいるけどやめられぬ


自由詩 雨で Copyright ……とある蛙 2019-08-29 10:32:45縦
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