時間が足らない
こたきひろし

時間は鏡に写らない
写す事はできない

だけど
今こうしている間にも
刻々と経過している

人間はそれを計測するために
時計を発見し発明した

日時計
砂時計
などの原始的な時計から始まって

遅れない
進んだりもしない
要するに
狂わない
正確一途な時計を機械にして追求し続けてきた

しかし果たしてそれが
人間にとって幸福か
否かはわからない

百メートルを競う走者が
その勝敗よりも
前人未到の時間の壁を突き抜ける事に
全力を集中させる
事の意味って
私には理解できない

以上はさておき

人はこの世界に産まれ落とされて
死に至るまでの個々の時間に
その長さに相違がある

果たしてそれは
人それぞれに与えられたものなのか
それとも
人それぞれが自らの力で引き寄せたものなのか
答えは
それぞれの命に
生まれる前から記入済みなのかもしれなかった

しかしたとえそこに
同じ文字が記載されている者同士でも
充分に足りていたか
それとも足らなかったかは
きっと背死に横たわるまでわからないだろう

それぞれが生きた道に違いが有る限り
人はそれぞれが苦しみ悩み
泣いたり笑ったりするから

命の時間をはかる時計なんて
存在しないんだから

ああ
私にはもっともっと
時間が欲しい

時間が足らないんだよ




自由詩 時間が足らない Copyright こたきひろし 2019-08-15 03:08:04
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