田中修子

あかやあ きいやあ きんいろやあ

愛を暗示されれば
とは、なんだ、とは、なんだよ おい だれか、

あつい、朱金の星が宿る
遠吠えを、したらいいわね
韻がおしまいになる前に まだいるの だれかいるの
仕方がないので
夜には四つん這いになりましょう
そうして梨を齧るように眠る
心ゆるび

痙攣する瞼のしたの眼球 が 透いて
みられてる 夢をみている わたしが
口腔を柔らかくあつい舌でなぞられるように
あなたにみられている

「大切なものはいつか、かならず終わるでしょうね。」
「終わらせたくないもの、ばかりだね。」

妹になるわ

おもいきり噛まれたあとは
痣になり 腕は
紫陽花の咲く夕暮れの庭となるから
どこまでも広がり滲みてゆく
ひとりきりではない と
熱をもち 腫れあがったそこを、舐めたら
切り落とした蛇の足をきらめく耳飾りにいたしました

「ねえねえねえ。」
「きみは どうも そのまま攫われてしまいそうで。」

光る溶岩が流れ込んできて
うずくまって いくつもいくつも
言星をうむと空っぽ 抱いてよ

「ここへおいで。」
「そこへいきます。」

示されているはずのところがあるのに
ゆで卵のにおい 手をつなぐ人々のなかで ひとり泣いていたあの子

とおい北の空
今夜は 花火が
豪奢に打ちあがる 体に深く滲みわたる

あかやあ きいやあ きんいろ やあ


自由詩Copyright 田中修子 2019-08-03 08:10:25
notebook Home 戻る