残火
高原漣

燦々と降る陽光

たちのぼる陽炎

橋の上で蜜柑が弾けた

まぶしい昼は倒れた

頭から爪先まで断続的に覆われて寝ている

白けた月が残る黎明はただ冥く

砂を噛んでやり過ごす

とるにたらない奈落

惨憺たる想いだけが降り積もる

蛋白質というのは、こんなにも悍ましく臭うのか

耳鳴りが消えない、床が波打っている

ああ、この世はあんなにも美しかったのに

果実は爛熟して地に落ちてしまった

なにが価値だったのか、尊いものだったか

もうわからない

私はまだ

燃えているの

燃えているの……


自由詩 残火 Copyright 高原漣 2019-07-22 21:45:08
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