ちょっとした秘密
ただのみきや

西野の花屋で薔薇を買った
高価だから四本だけ(バーボンに託けて)
紫の花弁が密集しておいそれとは見せてくれないタイプの娘がふたり
丁度よく開いた白い花弁になよやかに反り返る
ピンクの縁取りの娘がひとり
横に大きく広がりながら真ん中は貝のように閉じた純白
デザートと言う通り名(源氏名?)の娘がひとり
長持ちするという液体を混ぜた水を花瓶に注ぎ
裾脚を少しちょん切って
七部より下の葉もみんな
それがもう二週間と一日
薔薇たちは美しく咲いている
さすがに今日は少し端っこが黄ばみ出したが
葉を切った所からもう五センチも新たな枝が伸びている
こんなの初めてでなんだか
ことさら薔薇がけなげで可愛らしく
薔薇たちと運命的な
人と花との禁断の赤い糸のようなものが
そんな妄想で毎日水を足すときに
「今日もみんな素敵だよ ありがとう 本当にきれいだ
「いつまでも美しくありますようにイエスの御名によってアーメン
などと呟いて
結婚記念日に買った薔薇
妻には言わないことばを照れもしないで



           
               《ちょっとした秘密:2019年7月7日》








自由詩 ちょっとした秘密 Copyright ただのみきや 2019-07-07 10:31:18縦
notebook Home 戻る